かかりつけ医の役割と必要性

高齢になると、慢性的な病気にかかりやすくなります。

 

また、いくつもの病気を抱える高齢者も多く、必然的に通院する機会も増えていきます。そこで、通いやすく待ち時間の短い、気楽に受診できる「かかりつけ医」がいると大変心強いでしょう。

 

かかりつけ医の役割と必要性

 

かかりつけ医を持つ人が増えてきました。かかりつけ医とは、病気になった時や健康に不安があるときに、すぐに相談できる一番身近なお医者さんのことです。

 

一般的な治療を行う地域のクリニックや診療所、一般病院を言います。国や日本医師会では、かかりつけ医を次のように定義しています。

 

「何でも相談できるうえ、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」

 

つまり、単に病気の診療をするだけでなく、地域の保健や福祉を担う総合的な能力を有することが求められているのです。特に高齢者が患者の場合は、医療と介護の連携が不可欠なため、地域に根差したかかりつけ医の存在はとても重要視されています。

 

かかりつけ医の必要性が高まっている背景

 

かかりつけ医を持つことが推奨される背景には、高齢人口の増加に伴い医療費も増加していることがあります。医療の効率化を図るため、診療所などの小規模な病院と大学病院などの大きな病院のそれぞれの役割をはっきりさせようとしています。

 

具体的には、患者が外来にかかるとき、最初はかかりつけ医に診てもらい、一般的治療で難しい病状があった時には、かかりつけ医から専門的治療を受けられる大きな病院を紹介してもらい、治療を終えて病状が安定したらまたかかりつけ医に戻るという仕組みです。

 

紹介状がないと大病院への受診負担が増加する

 

国はこの仕組みを浸透させるため、近年度重なる法改正を行ってきました。2018年4月からは、他の病院からの紹介状なしに大きな病院(特定機能病院及び400床以上の地域医療支援病院)を受診すると、初診時5,000円、再診時2,500円以上の選定療養費が患者に負担されています。ただし、この選定療養費の金額設定は病院によりますので、各病院で確認してください。

 

また、団塊の世代が75歳になる2025年に向けて、介護と医療の連携による在宅医療の充実が図られています。在宅医療とは、医師のほかに看護師、理学・作業・言語療法士、歯科医、薬剤師などさまざまな医療専門職が患者宅に訪問する医療のことです。その在宅医療の充実化に向け、外来と在宅医療をまたぐ「かかりつけ医機能」の推進も始められています。

 

かかりつけ医機能は、かかりつけ医が往診などの体制を確保して、自らもしくは連携医療機関の協力を得て在宅医療を行い、患者と24時間の連絡体制を確保する機能です。しかし、このような条件を整えられるかかりつけ医がなかなか増えないため、まずは患者がかかりつけ医をもつことが推進されているのです。

 

このように、かかりつけ医は患者の一般的な病気の治療と健康相談窓口になり、大きな病院との懸け橋にもなり、ゆくゆくは在宅医療の充実のための重要な司令塔としても位置づけられています。

 

かかりつけ医をもつ7つのメリット

 

高齢者がかかりつけ医を持つメリットは次の通りです。

 

  1. 病気や健康問題を気軽に相談できる

 

かかりつけ医は病気や症状に関する全般的な知識を備える努力をしていますので、専門分野にかかわらずさまざまな健康問題について相談できます。例えば、将来の胃ろうの心配や延命処置のことなど、高齢者が不安に思っていることも相談に応じてくれます。

 

  1. 的確な診断を受けられる

 

患者の心身の状態、病歴、生活習慣などを踏まえた診療を継続的に行いますので、異変があれば素早い対応が期待できます。大きな病院では予約が必要な検査も、場合によっては、すぐにしてもらえることがあります。また、離れて暮らす家族が見逃しがちな認知症の初期症状にも気付いてくれる可能性が高いのです。

 

  1. 高度な医療機関との連携がスムーズに行える

 

専門的な治療が必要と判断されるときは、紹介状とともに適切な医療機関につなげてくれます。患者や家族が病院を探すよりも、効率よく適切な医療機関につながりやすいでしょう。また、専門医からの診断結果や治療内容もかかりつけ医にフィードバックされます。

 

4.「主治医の意見書」や指示書を書いてくれる

 

要介護認定を申請する際に必要な「主治医意見書」を書いてくれます。かかりつけ医がいないと、市区長村が指定する医師の診察を受けなければなりません。その場合は1回だけの診察で正確な意見書を書いてくれるかどうかの不安が残ります。また、介護が始まってからも、必要に応じて意見書や指示書を作成してくれます。

 

5.ケアマネジャーと連携してくれる

 

かかりつけ医は、ケアマネジャーや地域包括支援センターと連携します。そして、医療の情報をケアプランに、介護の情報を意見書作成や治療方針にそれぞれ反映してくれます。なお、ケアマネジャーは利用者及びかかりつけ医の同意のもとで主治医意見書を市区町村に開示を求めることができます。

 

6.在宅の看取りにつなげてくれる

 

かかりつけ医自身が在宅医療を行っている場合は、そのまま看取りまで担当してくれるでしょう。看取りまでかかわらない医師の場合も、いずれ訪れる終末期の相談に応じて、ケアマネジャーや在宅療養サービスの人たちと検討し、訪問医を中心とした看取りチームにつないでくれると思います。

 

7.死亡診断書を書いてくれる

 

自宅で死亡したときは、不審な点がなければかかりつけ医が死亡診断書を書いてくれます。書いてくれる医師がいないと、警察が呼ばれて検死を受けることになります。

 

どうする?かかりつけ医の見つけ方

 

かかりつけ医には、幅広く診察できる内科医がよいとされています。現在、地域の内科医に定期的に受診しており、高血圧症や糖尿病などの慢性病の薬を処方されている人は、その内科医がかかりつけ医といえるでしょう。

 

なお、内科の医師には、消化器系、循環器系、心療内科などそれぞれの専門分野があります。新たにかかりつけ医を探すときは、不安のある病状の専門分野の内科医を探すとよいかもしれません。

 

なお、内科の病気では定期的に通院していないが、膝や腰の痛みがあって長年整形外科に通院している高齢者も多くいます。

 

そういう場合は、その整形外科医がかかりつけ医でよいと思います。内科的なことにも深く通じており、何でも相談してくださいとしている整形外科医も多くいます。

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