医療コンサルタントの活用

コンサルタントはクリニック開業/経営の強い味方

 

「自分のクリニックを持ちたいな。独立して開業医になろうかな。」と考えはじめたばかりの先生方にとって、「開業までにすべきこと」や「クリニック経営の実際」というのは、なかなか具体的にイメージできることではありません。資金のこと、賃貸/土地売買契約のこと、設計/建築のこと、広告のこと、雇用のこと、賃金のこと、労務管理のこと…などなど、必要な知識が多過ぎて調べるだけでもどんどん時間が過ぎていきます。だからといって開業への気持ちが先走るあまり、見切り発車的に行動を始めても、無駄が多いばかりか致命的な失敗をしないとも限りません。

 

そんな先生方の強い味方となってくれるのがコンサルタントです。先生にとっては一生に一度の経験かもしれない開業のあれこれも、彼らにとっては毎日のように取り扱う業務の一環。豊富な経験や専門知識の中から、より低コストで、よりスマートな手段を提案してくれる存在なのです。

 

実績や能力に加え、人柄も見てコンサルタントを選ぶ

 

それだけにコンサルタント選びは慎重に行いたいもの。実績や能力は当然ながら、人柄や価値観、そして何より自分との相性が良く、意思疎通がスムーズに図れる人を探してみましょう。彼らもプロフェッショナルとはいえ、やはり人と人とのことですから「そりが合う、合わない」というものがあるためです。さらに、開業後の経営までサポートしてもらうつもりであれば、もはや一蓮托生と言える間柄。会話するのにストレスを感じたり、本音を打ち明けづらい印象の人では、どこかでコミュニケーションに齟齬を生じ、とんでもない事態を招くことになるかもしれません。

 

逆の見方をすれば、相性ぴったりで全幅の信頼を置けるコンサルタントが見つけられると、これほど心強いことはないでしょう。人の命を預かる医師でもあり、多くのスタッフを雇う経営者でもあるクリニックの院長には、想像以上のプレッシャーや不安がつきまといます。仕事面の相談だけでなく、たまには息抜きに愚痴を聞いてもらえるような人物が身近にいれば、心理的にも余裕が生まれます。コンサルタントを選ぶ際は、実績や能力ばかりでなく、その人柄にもぜひ注目してみてください。

 

重要事項の意思決定まで丸投げしてはならない

 

では実力も申し分なく人柄も先生にぴったりの人材が見つかったとして、クリニックの開業/経営において迷ったり困ったりした場合は、一も二もなく彼らに相談し、その後の対処まですべて任せるべきでしょうか? 確かに「餅は餅屋」という言葉もあるように、その道のプロであるコンサルタントに取り仕切ってもらう方が確実ですし、楽でもあります。「コンサルタント料を払うのだから、院長が動かなくとも大丈夫なくらい働いてもらいたい」という考え方ももっともです。

 

ですが彼らはあくまで「より良い具体策」を提示する存在。一蓮托生の仲間と言えど、最終的な決断を下すにあたっては自分自身の責任で選択しなければなりません。そもそも安定した勤務医の立場を投げ打ち、借金をしてまで開業医となるのはコンサルタントではなく先生ご自身です。クリニックの未来を左右するかもしれない決断を、自分以外の人間に委ねるようでは強いリーダーシップも示せないでしょう。重要事項についての最終的な意思決定にあたっては「最後に決めるのは自分だ!」という熱い気持ちを忘れないようにして下さい。

 

経営に余裕が出てきたら事務長制の検討を

 

無事にクリニックを開業できた先生には「経営者・管理者・医師」の三役の立場がその一身にのしかかってきます。おそらく勤務医時代に比べ多忙を極めるはずですが、それでも開業直後は経営にあまり余裕がないことが多いこともあり、事業主として覚悟を持って三役をこなすことが必要だとお伝えしました。

 

では、開業後順調に患者を増やし続け、経営にも心にも余裕が出てきた場合はどうでしょうか。開業を志していた時の気持ちを振り返り、「自分が理想としてきた医師像から少しかけ離れてきた。もっと医療に集中したい」と感じる場合があるかもしれません。経営や管理を極めたくて開業医となる先生は少ないでしょうから、このような欲求が生まれるのも自然なことです。そんな時は「事務長」を採用し、経営者・管理者としての院長をサポートしてもらうことを検討してみてはいかがでしょうか。

 

事務長のポジションを高めることが必要

 

条件が合えばすぐにでも導入したくなる事務長制ですが、落とし穴もあります。医療行為に携わらないため、事務長の立場は常に危うさと隣り合わせなのです。例えば看護師や臨床検査技師らの目には、クリニックに直接の収入をもたらさない事務長の仕事は“非生産的業務”だと映ってしまうことも。そうして事務長が現場のスタッフから軽視された挙げ句、事務長制自体が形骸化してしまうケースが意外に多いのです。ですから事務長を迎え入れる際には、彼/彼女の「長」としてのポジションを高めてあげる必要があります。それには管理職としての業務の範囲や権限を明確にし、「クリニックに不可欠な役職」であることを印象づけなければなりません。週に1回程度しか出勤してこないような非常勤事務長であればなおさらです。

 

もちろん事務長本人にも「院長に成り代わってクリニックを運営していく」という意識を持ってもらいましょう。院長とスタッフの橋渡し的存在になってくれるよう、常にコミュニケーションを密にとることも必要です。事務長がスタッフ・院長の両方から信頼される存在となってくれれば、間違いなくコスト以上のメリットをクリニックにもたらしてくれるはずです。