患者さんとの接し方
医療施設にとっても評判が非常に重要な時代
外食がお好きな先生であれば、レストランや居酒屋を選ぶ際にインターネットの口コミサイトを利用した経験のある方は多いのではないでしょうか。店は客のレビューによって点数で評価され、ランキング順に表示できることがほとんど。訪れたことのない店の評判を知りたいときなどに使ってみると、実に便利なサービスです。ですが開業医を目指そうという方なら、このサービスを「評価される側」から捉えてみることも必要です。
というのも同じような仕組みの医療施設口コミサイトが近年利用者数を伸ばしているからです。20年以上前であれば患者同士や地域住民の間でささやかれるぐらいだった「病院・クリニックの評判」が、IT技術で可視化され誰でも知ることができるようになっているのです。以前とは「評判の重要性」が比べものにならないほど高まっている情報化社会において、クリニックの価値を下げないようにする手だてはあるのでしょうか。
医療施設を接遇面で評価する患者は多い
医療施設口コミサイトで数々のコメントを読んでみると、診察内容や設備に関するものよりも医師・スタッフの接遇に関するものが目立つことに気づかされます。つまり口コミを寄せる患者にとって「自分がどう扱われたか」という点が、その医療施設を評価する際に大切な要素なのです。診察スキルの改善や新たな設備投資をすぐ行なうことは難しいかもしれませんが、接遇面の見直しでクリニックの評判が上がるのなら試さない手はありません。
まずは、明るい笑顔と清潔感のある身だしなみはサービス業の基本中の基本。大声での会話や私語を慎むのも同様です。また、いくら多忙であってもそれをあからさまに表情に出してしまうのはプロフェッショナル失格。とくに患者との対話時はしっかり目を見て耳を傾け、「あなたのためにきちんと時間を割いていますよ」という姿勢が伝わるようにしましょう。
ホスピタリティにあふれる接遇を心がけたい
クリニックの第一印象を良くしたいのなら、受付の接遇レベルをアップさせるのが近道です。受付スタッフは医療従事スタッフと情報共有し、すべての患者名と症状を覚えておくと良いでしょう。人間同士のふれあい・温かみを感じる接遇に繋がるはずです。また、プライバシーにも充分に気をつけておきたいところ。たとえば診察の際に服を脱いでもらったりすることはクリニック側からしてみれば日常茶飯事ですが、多くの患者にとってはそうではありません。他の患者の視線に触れないようにするなどのちょっとした配慮が、クリニックやスタッフへの信頼感を生んでいくのです。
開業医となった際に気を配りたい接遇マナーはここであげた以外にも数多く存在しますが、そのすべての根幹にはホスピタリティ、つまり「他人に対する心づかい」が息づいていなければなりません。表面だけを取り繕うのではなく、病気やケガで弱っている患者の身になって考えること。その想像力を医師とスタッフで育むことで、接遇に魂が宿ります。誰に指摘されるでもなく、内から湧き上がる思いによって全員が行動できるようになった時、クリニックの評判は素晴らしいものになっていることでしょう。
集患や差別化につながるネーミングを
いつか開くご自身のクリニックに、どんな名前をつけるか考えたことはあるでしょうか? 独立する時期は決めていなくても、クリニック名だけはすでに考えている方もいらっしゃることでしょう。ですがその名前は、何らかの合理的な根拠にもとづいたものでしょうか。もちろん、響きの良さだけで決めた名前や、なんとなくの直感から浮かんだ名前が必ずしも悪いわけではありませんが、「集患しやすいか否か」という観点で見ると、もっと有利な名称がある可能性は捨てきれません。
実際のところ競合クリニックの多い激戦区で開業する場合などは、ネーミングに時間をかけじっくり検討・工夫する必要があります。近隣を調査してなるべく他院と印象が被らない名前を採用するなど、新規参入だからこそクリニック名から差別化を図るべきなのです。しかし、「良いネーミング」とは、一体どういったものなのでしょうか。今回のコラムは、そのヒントとなる考え方をお伝えしていきます。
ひらがな表記の違和感を上手に利用する
例えば、よくある名前の一つに『名字+クリニック』というパターンのものがあります。しかしこのタイプのネーミングは町中でもよく目にするだけに、よほど珍しい名字でない限りクリニック名での差別化、ひいては集患は図れません。ただし、ほんのちょっとの工夫をするだけで人の目にとまる確率を上げることは可能です。その最も手軽な方法が、名字をひらがな表記にすること。私たち日本人には多かれ少なかれ「名字のほとんどは漢字表記である」という無意識の固定観念が存在しているため、ひらがな表記の名字に知らず知らず若干の違和感を覚えるのです。
ネーミングへの違和感は「他院との違い」として認識され、差別化・集患の第一歩となり得ます。さらに言えば、ひらがな表記にすることでクリニックに「柔らかい」「優しそう」というイメージも付加できます。心療内科や婦人科・小児科を中心にひらがなのクリニック名が増えているのは、これを意識したものといえるでしょう。
さらに積極的に差別化を図るなら、「青空」「あすなろ」「元気」といったクリニックの目指す理想などを盛り込むと良いでしょう。ただし医療のイメージからあまりにもかけ離れた言葉を選ぶと、違和感ばかりが増大するため注意が必要。周囲の人の意見を参考にしながら候補を絞っていきましょう。