消費税の歴史

 

消費税が導入されて30年。もう国民にとって当たり前の税金になっています。ところで、消費税が開始されたのは平成元年であったことは、皆様ご存知でしょうか?

 

つまり、消費税は平成と共に始まったのです。

そして、新元号が「令和」になった今年、消費税率10%への増税、軽減税率導入と消費税も新たな転機を迎えようとしています。

 

そこで、平成時代に消費税制度がどのように移り変わってきたのかを振り返ってみます。

 

【平成元年】消費税導入とその理由

 

消費税導入が決定されたのは、1988年12月、竹下政権のときです。そして、わずか4ヵ月後の1989年4月に実施されました。

導入までの議論の長さを考えると、異例の速さともいえる展開です。

 

消費税の導入は国民の猛反発を招き、翌年の参院選で自民党は大敗しました。

 

では、そもそもなぜ、消費税という税金を作ったのでしょうか。

 

消費税とは

 

消費税とはその名称通り、消費をしたことに対してかかる税金で、物やサービスを消費した時に発生します。

この消費というのは、スーパーで食品を購入した時やタクシーに乗った場合など、生活していくうえでのありとあらゆる場面が該当します。

 

そして、その購入金額に対して現行では10%の消費税が上乗せされ、消費者は購入金額と消費税を合わせて事業者に支払います。

よって消費税を負担するのは消費者ですが、実際に国に消費税を納税するのは事業者です。

 

このような担税者(税を負担する人)と納税者(税を納める人)が異なる税金のことを間接税といいます。 間接税は消費税以外にも、酒税、たばこ税、印紙税、ガソリン税などがありますが、消費税はその中でも圧倒的な税収があります。

 

導入理由

 

消費税が導入された理由は主に次の3点です。

 

高齢化社会への財源確保

 

今の日本が抱えている大きな問題の1つに少子高齢化があります。

少子化により現役世代が減少し、税金や社会保険料などの国の収入が減ります。他方、高齢化により医療費などの社会保障費は増大します。

 

増え続ける社会保障費をまかなうためには、国の収入を増やすしかありません。しかし、法人税と所得税に頼っているままでは、現役世代ばかりに負担をかけることになります。

 

所得税と消費税でバランスをとる

 

所得税は累進課税です。たくさん稼ぐ人ほど高い所得税を支払い、低所得の人ほど所得税は低くなります。逆に消費税は貧富の差関係なく、すべての人が負担します。

 

この2つの税金を調整することによって、他の税制や社会保障制度など全体から見たバランスをとることができます。

 

間接税の仕組みを変える

 

消費税が導入される前にも、間接税には物品税や石油税など様々な種類がありました。これらは所得税増税を回避するために導入され、既にかなり増税もされたので、所得税も間接税も増税できない状況になってしまっていました。

 

特に贅沢品にかかる物品税については、生活水準の上昇により贅沢品に手が届く消費者も増えてきたため、時代に合わなくなってきていました。

 

消費税増税の使い道

 

社会保障と税の一体改革

ニュースなどで、「社会保障と税の一体」というワードを耳にします。

単語だけ知っていて、詳しい内容を知らない人も多いでしょう。

 

消費税増税と密接に関係している話なので、まずはここから理解していきましょう。

 

全額、社会保障のために利用

 

話は民主党政権時代にさかのぼります。当時の野田政権は自民党・公明党とも合意のうえ、2012年8月の法案で、今後の消費税増税分は全額社会保障に充てることを決定しました。

 

「社会保障と税の一体改革」とは、社会保障の充実・安定化と、そのための安定財源確保と財政健全化を同時に達成することを目指したものです。

 

具体的には、現在の高齢者3経費(基礎年金・老人医療・介護)と呼ばれる高齢者メインの社会保障から、社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)という、高齢者だけでなく子供、孫の世代までのサポートの充実させることが目的です。

 

これを政府は「全世代型対応」の社会保障改革であるとしています。

 

なお、元々2012年の三党合意の時点で、消費税率を5%から前回の8%、そして今回の10%の2段階で増税することと、その使い道は決定されていました。

2019年10月の消費税率10%への引き上げは安倍政権の独断ではなく、元々決まっていたことの実行とも言えるでしょう。

日本が抱える問題

 

ここからは、日本が現在抱えている問題について解説していきます。

これを理解することで、消費税増税が断行される理由が分かるはずです。

 

少子高齢化

 

現在の日本は急速に少子高齢化が進んでいる状況にあります。

単純に考えて、子供が減少して高齢者が増加するということは、それを支える現役世代の割合が年々減少するということです。

 

もし少子高齢化の流れを食い止められなかった場合、2060年には日本の人口は約9,000万人にまで減少し、65歳以上の人口が40%にまで増加すると予想されています。

 

65歳以上の人口割合

 

1970年 7.1%

2013年 25.1%

2060年 39.9%

 

出生数

 

1970年 193万人

2013年 103万人

2060年 48万人

 

社会保障費の増加

 

高齢者の人口増加によって、年金、医療、介護などの社会保障費用は増加の一途です。

実際、国の予算は毎年社会保障費用に最も多くの財源が充てられており、その額は1990年の11.5兆円から2018年の33兆円とおよそ3倍にまで膨れ上がっています。

 

社会保障関連の歳出が増える一方で、社会保険料収入は横ばいで推移しているため、社会保険制度が破綻してきています。

 

借金の増加

 

保険料収入で足りない部分は、税収と国債の発行で賄っているのが現状です。ただ、大幅な経済成長が見込めない現在では、税収自体も、歳出に対して大幅に不足しています。

その結果、国債発行による借金が膨れ上がる悪循環が生じます。

 

新規国債発行額は1970年の7.3兆円から2018年は33.7兆円にまで増加しており、借金残高は国際的にも最悪レベルです。

 

日本の借金は2018年度で総額1,087兆円にもなります。

これは国民一人あたりに換算すると約859万円の借金を抱えていることに相当します。

 

この状況が続けば、将来、社会保障制度の安定的な機能を実現することは難しくなります。

現在はその場しのぎの借金でなんとかしていますが、それは子どもや孫世代への問題の先送りでしかありません。

 

このような状況を根本的に改善するために、消費税増税という方針が打ち出されています。

 

まとめ

 

消費税増税の必要性と、増税分の使い道について解説してきました。

 

少子高齢化や日本の財政状態の悪化の状況を考えると前回の増税に加えさらなる増税はやむを得ない部分はあります。

しかし、今回の増税だけでは全く問題は解決しておらず、今後も問題は山積みです。

 

国の現状と増税分の使い道を知ることで、適切な増税かどうかを一人ひとりが考えることが必要かもしれません。