病診連携
地域の診療所との密接な連携と役割に応じた医療分担により、患者さんに対して合理的かつ効率的なより良い医療の提供が図られてきております。「地域全体が一つの病院」の考えの下、病診連携室は円滑な地域医療連携事業のサポート機関としてのその役割を果たしています。
病診連携とは
従来よりちょっとした病気でも、いろいろな近代的な設備の整っている大病院にかけつける人が多く見受けられます。ごく軽い“かぜ”の人から入院が必要と思われる“肺炎”の人までたくさんの患者さんが大病院に集中し、大混雑をきたし、“3時間待ちの3分診療”というような悪評もたっております。このような傾向を解消し、よりよい医療を提供するために病院と診療所が適切な役割分担のもと、患者さんを紹介しあう仕組みが「病診連携」です。
病気になったり怪我をしたら、まず近所のかかりつけ医のところに行き、そこで病院に行く必要があると判断された場合にのみ、紹介状を持って病院に行くようにしますと、病院の混雑は緩和し、軽症の人にも重症の人にとっても、待ち時間も短くなり、十分な手当てをしてあげることが出来ると考えられます。また、病院の医師は、紹介状により患者さんの状態を適切に把握する事が出来ます。
最近では、情報の公開ということとも関連し、病院では“インフォームド・コンセント”ということがよく言われます。これは患者さんに、その病状について十分説明し、患者さんの希望を十分聞きながら病気の診断、治療を進めてゆくことです。そのためには十分な時間をとって説明することが必要です。思いやりのある接触、十分な説明という診療の基本を実行するために、ご来院になる患者さんは、是非、かかりつけ医からの紹介状を頂いてくるようお願い致します。それがよりよい医療の提供につながります。
病診連携のメリット
患者さんからみたメリット
診療所と病院の医師の連携が良いので安心感がある。
紹介状を持って来院した場合は、病院での特別療養費が徴収されない。
症状に応じた適切な医療が受けられる。
待ち時間が短くなる。
診療所からみたメリット
面識のない先生にも気軽に紹介できる。
自分の専門外の領域でも心強く対応できる。
紹介した患者さんの情報が確実にフィードバックされる。
自院に高額な先端医療機器があるような感覚でMRIやCTが利用できる。
病院からみたメリット
病院と診療所間の情報量が多くなり、コミュニケーションが良くなる。
病院と診療所間の役割分担が明確になり、各々本来の機能が発揮できる。
患者さんの待ち時間が短くなる。
地域医療連携
地域医療連携とは、地域の医療機関がそれぞれ持っている医療機能や専門性を活かして役割を分担し、医療機関同士が協力をして連携を図りながら患者さんに適切な医療をその地域で提供することです。
例えば、患者さんの治療がクリニックや診療所で引き受けができないような場合、クリニックや診療所から病院へ患者さんを紹介します。
具体的に言うと、ガンの所見が見つかり精密な検査を受けないといけない様な場合に、クリニックや診療所には検査機器が無いので病院へ紹介する、などです。
またその後、紹介された患者さんが病院で検査や治療を受け、状態が安定し、病院で治療する必要のない状態になればクリニックや診療所へ戻します(逆紹介といいます)。
このように、診療所やクリニックのようなかかりつけ医の役割を果たす医療機関を軸に、より高度な治療や入院が必要になれば病院がそれを担当し、地域の医療機関全体で連携を図り患者さんの治療に臨んでいるのです。
地域医療連携における3つの問題点とは?
今日では一見、普通に行われているようにも見える地域医療連携ですが、どんな問題点があるのでしょうか。
いくつかある問題を見ていきましょう。
診療情報の共有タイムラグ
まず一つ目に診療情報の共有にタイムラグが生じていることです。現在ほとんどの医療機関間で診療情報の提供を紙媒体で行っています。そのため、診療情報を作成し、紹介先まで渡るのに手間と時間を要します。また、場合によっては作成された診療情報から詳細な情報を読み取れないといったケースもあります。
人員の不足
二つ目に連携業務を担当する人や営業を担当する人の人員の不足が挙げられます。連携業務の人員不足により、なかなか細部まで連携に手が回らず、密な連携がとれないことがあります。また、日ごろから営業をして自院の医療機能をアピールできる機会や他院の情報を仕入れる機会が少なく、他院からの紹介先、連携先として繋がりにくいのも問題となっています。
医療機関の機能・専門性が不明瞭
三つ目に、各医療機関の医療機能や専門性が不鮮明であること、また各医療機関へどんな患者さんを送ればいいかわからないといった状態にあることです。
「どのくらいの状態なら診てくれるだろうか」、「今後フォローしてほしいけど検査機器等そろっているだろうか」、「この症状を専門としている診療所はないだろうか」など連携を取りたい医療機関の決め手がはっきりしないことが円滑な連携を滞らせているのも現状です。
診療情報共有のタイムラグの問題に対する解決策
診療情報共有のタイムラグには、ネットワークを通じて共有システムの構築を図ることが一番の策だと考えられます。
このシステムが構築されると患者さんの診療情報や検査結果、服薬状況をすぐに把握することが可能になり迅速な対応が取れます。
また、重複して検査を行うことを防いだり、服薬を中止した薬とその理由も読み取ることができ、安全で安心な医療の提供も可能になります。
実例として、長崎県では「あじさいネット」というネットワークによるカルテ共有システムを構築し、地域医療連携システムを成功させています。
人員不足の問題に対する解決策
医療連携・営業人員の不足に関しては今よりも人材の確保が必要且つ人材育成も必要になると考えられます。
医療連携といえども時には介護や在宅医療への介入が必要な患者さんもでてきます。そのときに最低限の知識があると連携はスムーズになるでしょう。
また、自院のアピールポイントや専門性等をしっかりと把握することや、営業ツールを訪問のみとせずSNSやサイトを活用するなどして工夫することも不可欠でしょう。