開業祝いは何を贈るのがベストなのか

贈るものでセンスや知性を試される開院祝い

 

勤務医としてある程度のキャリアを重ねてくると、先輩や同僚、ともすれば後輩といった身の回りの中から、独立してクリニックを開く人たちが現れ始めます。時には「モタモタしている間に先を越されてしまった…」など複雑な思いに駆られることがあるかもしれませんが、例えそうだったとしてもご自身を開業へと奮い立たせる良い契機として前向きに捉え、「次は自分が」の決意を開院祝いに秘めて贈ってみてはいかがでしょうか。

 

とはいえ実際に選ぶとなると、自分のセンスや知性を試されているようで非常に難しいのが開院祝い。普段からプレゼントのやりとりに疎い、いわゆる“ギフト慣れ”していない人であればなおさらです。「定番の胡蝶蘭を贈っておけば間違いはないだろう」と無難な選択をしたつもりでも、受け取り主に心理的負担をかけることもあるので細心の気配りが必要です。

 

定番のお祝いには意外な落とし穴も

 

たしかに胡蝶蘭は、『幸福が飛び込んでくる』という花言葉を持つ、縁起の良いお祝い。花が長持ちすることも人気の要因の一つです。しかしその人気が裏目となって、開院したばかりのクリニックには飾りきれないほどの胡蝶蘭が集まることも。「スペースはないけれど、目につくところに置いておかないと送り主に顔向けできないし…」と、受け取った人を悩ませるケースが少なくありません。大ぶりのスタンドフラワーや観葉植物もまた、同様の問題を招く可能性がないとは言い切れません。

 

また、時計や絵画をはじめとするインテリアもお祝いの定番と言えますが、これらについてもかなりの選択眼を求められるようになってきています。というのも近年オープンするクリニックの多くが、素材や色調など、統一されたデザインイメージに則って設計されており、それにマッチした品を選ぶためには、贈る側にもそれなりのインテリアセンスが求められるからです。成功すれば「さすが!」と一目置いてもらえること請け合いですが、ここは十分に熟慮されたほうがよさそうです。

 

最大のお祝いは、相手のことを思う気持ち

 

では、いったい何を贈るのが良いのでしょうか? 冠婚葬祭などの一般的な贈答時によく耳にするように、「結局、面倒がないのはお金や商品券だ」と割り切ってしまうのも一つの手ではあります。実際、開業直後は物入りで、「正直に言えば現金が一番ありがたい」と考えている先生も多いはずです。またお菓子やお酒などの食品も「消え物」と呼ばれ、消費さえしてしまえば後は何も残らないため、お金と同様に合理的なお祝いとして重宝されています。

 

「そうは言っても記念となる物だから、ぜひ形に残るものを贈りたい」という先生は、実用的な品を選んでみてはいかがでしょうか。開院直後のクリニックの場合、スタッフが使う道具は往々にして必要最低限しか揃えていないことが多いもの。例えば加湿器・空気清浄機やエスプレッソメーカーなどといった、必須とまでは言えないけれど、あると便利な家電などは検討の価値がありそうです。

 

開院祝いと一概に言っても、贈る先生と贈られる先生の関係性は様々ですから、この問いに正解はありません。だとすれば、しっかりと相手のことを考えて贈る、そのこと自体が最大のお祝いだと捉えることもできるはず。時間と手間を惜しまず開院祝いを選んだとき、その気持ちはきっと相手に届くでしょう。ご自身がクリニックを開き、お祝いを受け取るその日を想像しながら、どうぞ楽しく悩んでみて下さい。

 

お祝いムードに気を緩め過ぎると失敗に繋がる

 

数々のお祝いの品や花とともに、友人知人たちのにこやかな笑顔にも祝福されるクリニックの内覧会。苦労してここまでこぎつけた院長およびスタッフは、 この晴れやかな雰囲気にホッと胸を撫で下ろすことでしょう。しかし、内覧会はクリニック開業後のスタートダッシュを左右する大切なPRイベントでもあるため油断は禁物。そこで今回は『やってはいけないNG集』と題し、内覧会を失敗させてしまいかねない、避けるべき事柄や行動についてお伝えしていきます。

 

まずNG行為として代表的なものといえば、内覧会の平日開催です。近い将来の患者さんとなるであろう近隣の方々にできるだけ多く足を運んでいただくためには、やはり土日や祝日に開催すべき。スタッフにとっては休日出勤となってしまいますが、このことを理解してもらった上で協力を要請しましょう。また当日の来院見込みが多人数に上るようなら、内覧会と関係者向けレセプションは別日に設定したほうが吉。院長が知人とばかり話し込んでしまっては、地域の人たちとコミュニケーションをとるという貴重な機会を失ってしまいます。

 

来場者に悪印象を与えてしまうNG行為

 

また内覧会では何かと人手が必要になるため、関係各社の営業マンなどが応援に駆けつけてくれる場合がありますが、その際の服装にスーツはご遠慮願いましょう。背広姿の集団がクリニック内を闊歩していては、一般の方、とくに子どもや高齢者は気軽に見学しづらいのではないでしょうか。「来てもらった人に“地域に開かれたクリニック”というイメージを持ってもらいたい」と説明し、目立たない私服での協力をお願いしておきましょう。

わざわざお祝いの品を持参した来客に対して「あとで院長に渡しておきます」などと受付で預かってしまうのもよくありません。内覧会当日は大忙しとなるためついやってしまいがちな行為ですが、中には「軽く扱われた」と憤る人もいます。お祝いの品に関しては院長が直に受けとる旨を、あらかじめ周知しておくべきです。これと同様に失礼だと捉えられかねない行為が、見学中の来場者を尻目に会場片付けを始めてしまうこと。終了時間になったからといってそそくさと掃除を始められては気分の良いものではありません。来場者の目に触れない箇所から片付けはじめるなど、作業手順を徹底しておきましょう。