スーツの歴史

仕事着やフォーマル着として、普段から当たり前のように着ているスーツ。
しかし、スーツの歴史についてはあまり知らないという方が多いのではないかと思います。
スーツはいつ頃から着られるようになって、どのような歴史をたどってきたのでしょうか?
その歴史をご紹介します。

 

【スーツの歴史】

スーツの源流は15、16世紀ヨーロッパのフロックコートだと言われています。農民の農作業着として、また軍人の軍服や貴族のコートとして、機能は全く異なるものの、幅広く用いられてきた当時スタンダードな形でした。

18世紀から19世紀になると、朝の散歩用に歩きやすく前裾を大胆にカットしたモーニングコートや、乗馬に適した形に改良された燕尾服(テールコート)がイギリスで登場します。これらは貴族が朝の日課である乗馬の後、そのまま宮廷に上がれるようにとのことから礼服化し、現在でも正礼服としてその役割を果たしています。

フロックコートもモーニングも燕尾服も、これらは主に、屋外着用を目的としたものでした。

やがて、屋内でくつろげるような室内着として、すその部分をカットした、現在のジャケットスタイルが登場します。これはスモーキングジャケットと呼ばれ、後にタキシードと呼ばれるようになります。

因みに燕尾服が「ホワイト・タイ なのに対し、ドレスコードに「ブラックタイ」とあればタキシードを指します。実際、スーツの起源・歴史には諸説あり、上記のように英国貴族に由来するものから、軍服からの派生とされるものもあります。
例えば軍服の詰襟をたおし、くつろいだ形が現在のスーツの襟の形で、更にそれに伴いボタンの数が5、4、3と減らされ今のスーツジャケットに至るとされている説もあります。いずれにせよ、その時代時代の背景に伴って少しずつ形を変えながら現在のスーツシルエットにたどり着くのです。

 

【欧米諸国のスーツの歴史】

20世紀初頭、現在の形の幅タイが登場し、より軽快感のあるスーツ生地開発が進みました。

当時のスーツは、短い背広丈にワイド・ラウンデッド・ショルダーの肩、極端に広い胸幅が特徴的です。色もピンクやラベンダー系が多かったのに対し、グレーとブルーへと変わってきたのもこの頃なのです。やがて時代はナチュラル・ショルダーへと移行しました。第一次大戦の影響もあってカーキ色の厚手綿布やコーデュロイのコート等が流行し、ナチュラルでスリムなシルエットが好まれるようになります。

1920年代、アメリカの経済成長は同時に市民のファッションにも大きく影響を与えました。ビジネスマンが影響力を持つようになり、ゴルフやテニスなどのスポーツがポピュラーなスポーツとして注目を集め、1960年代にはアイビー・リーグ(アメリカ名門8大学のアメフトリーグ)の学生がヤングファッションとしてステイタスを築き上げ、大人気ファッションへと変化して行くのです。

1960年代後半、それまでダークトーン中心の男性ファッションに華やかさや色彩を取り入れる動き、ピーコック革命がおこりました。それまで白一色だったシャツにもカラーバリエーションが増え、デザインも華やかになるなど、スーツスタイルがさらに幅広く変化していくのです。

やがて時代はデザイナーズブランドの時代へと移り変わります。

1980年代にはイタリアファッションが注目されるようになり、元々根強かったサルトリア文化(素材や着心地を追求した仕立て屋文化)が台頭するようになりました。

 

【日本のスーツの歴史】

日本でスーツは幕末末期~明治時代以降軍服を起源とする考えが有力です。その頃のスーツといえばイギリス、アメリカ、フランスの製品のスリーピーススーツと言われています。実際は和装の人がまだまだ多くいたので、日本での洋装といえばむしろフロックコートが主流の時代でした。

その後、大正時代になると男性のスーツスタイルも一般化し、やがて日本のスタンダードファッションへと変わっていきます。因みにこの時代でスーツと言えばオーダーメード製品だけでした。職人の手によって一人一人の体型に合わせ作られるものです。

しかし戦後、機械の発達、産業のオートメーション化への移行に伴い、レディメード(既製品)による大量生産の時代へと変化していきます。現在オーダースーツを仕立てるのは一部のこだわりを持った愛好家、体型に合わせたスーツを必要とする人などが中心で、そのほとんどが既製品で済まされているのが現状です。この変化こそが日本におけるテーラー技術の衰退とも言われています。

このように日本でのスーツの歴史を紐解く時、文明開化とともに歩んで来た事が良く分かります。そしてその急激なまでの西欧文化への移行が、本来の意味やマナーの浸透の遅れを招き、やがて日本独自のスーツ文化を築きあげることとなったことに起因するのです。
例えば時間帯によって礼服を着替える習慣は日本にはないため、夜の結婚式でもモーニング着用が良く見られますし、フォーマルスーツとして幅広くブラックスーツが認められていますが、実際欧米ではブラックスーツは葬儀用として着用されているなど、日本だけの常識が実は沢山存在するのです。

いずれにせよ、世界的に見てもスーツ・礼服の簡素化、略式化が進む傾向にある事は事実で、今後もスーツはその時代に合った形に進化し続ける事でしょう。

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

スーツの歴史について解説していきました。

世界中で着られているスーツの歴史をしれば、ご自身で着ているスーツも

愛着がわくのではないでしょうか?