診療報酬とは

日々の生活において、病院や薬局でお金を支払うことはあっても、医療サービスの対価である診療報酬についてきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか。今回は、診療報酬制度や、2年ごとに実施される診療報酬改定について解説します。

 

そもそも診療報酬って何?

 

医療費は、医療機関や薬局での診察・治療・処方などの医療サービスを受けたときにかかる費用です。一方で、医療機関が、提供したサービスの対価として受け取るのが診療報酬です。診療報酬の1~3割は患者さんが支払う自己負担分で、残りは患者さんが加入している国民健康保険や健康保険組合・全国健康保険協会(協会けんぽ)などの「保険者」から支払われます。

 

一般的に、サービスの価格はその提供者が任意に決めることができますが、医療行為や医薬品代については国の制度によって細かく値段が定められています。この公的な価格表に基づいて決定した医療費も「診療報酬」と呼ばれます。つまり、「診療報酬」とは、医療行為・医薬品などの対価のことを指す場合と、医療に関する価格表や制度そのものを指す場合があるのですね。

 

また、医療機関が対価として受け取った診療報酬のすべてが医師の収入になるわけではありません。看護師をはじめとしたスタッフの人件費、医薬品費、機器・機材費、設備関係費など、病院全体を維持するために使われます。診療報酬は、私たちが病院で治療を受けたり、適切に薬を購入したりするための大切な原資なのです。

 

診療報酬改定では何を見直すの?

 

医療の価格表としての役割を持つ診療報酬は、社会・経済状況に応じて2年に一度見直されます。厚生労働省「平成28年度診療報酬改定の概要」によると、2016年度には以下の4つの視点で改正されました。

 

「地域包括ケアシステム」の推進と「病床の機能分化・連携」

 

医療、介護、生活支援・介護予防などが連携し、包括的なケアが行えるよう促進

「かかりつけ医等」のさらなる推進など、患者にとって安心・安全な医療を実現すること

かかりつけの医者・薬局の普及と両者の連携、ICTによる医療データの活用の推進

重点的な対応が求められる医療分野を充実すること

 

がんの緩和ケアや認知症患者への医療の評価、口腔疾患の患者各々の生活に沿った医療の促進など

効率化・適正化を通じて制度の持続可能性を高めること

後発医薬品の価格算定ルールの見直しや、大型門前薬局の評価の適正化など

※門前薬局:医療施設の近くにあり、その施設が発行した処方せんへの対応を主とする薬局のこと。

医療だけでなく、介護に関する課題も多く見受けられます。高齢社会に突入している日本では、医療費がふくらみ、公的医療制度の存続が危ぶまれているからです。そのため、介護も含めて医療費や医療の質について考えなければならないのですね。

 

2018年度は診療報酬と介護報酬の同時改定

 

2018年度は診療報酬改定が行われる年です。さらに、介護報酬も同時に改定されるため、より注目されています。

前述のとおり、2016年度の改正では医療と介護の連携を重視する姿勢が明確でした。2018年度の改定では、両者をより一体的に見直すようです。社会保障制度の安定のためにも、医療と介護が偏ることなく、より適切なサービスを受けられるようになってほしいですね。

 

DPC制度とは

 

DPCとは?

DPCとは、「Diagnosis Procedure Combination」の頭文字をとったもので、Diagnosis=(診断)、Procedure=(治療・処置)、Combination=(組合せ)からなる略称です。そのままをとらえると(診断)と(処置)の(組合せ)という意味となります。

 

つまり、DPCとは、「診断」と「治療・処置」の組み合わせから、様々な状態の患者を分類するための指標ということになり、そして、これを「診断群分類」と呼んでいます。

 

では、診断群分類をもう少し詳しく見てみましょう。

 

診断群分類とは、米国で開発された「DRG;Diagnosis Related Group」を応用したものになります。

 

DRGは、病院医療における診療サービスを改善するための取組み,すなわち診療プロセスを詳細に評価し改善していくという品質管理(Quality Control)の手法を目的とし開発されたものですが、この評価プロセスから、臨床的な判断に加えて、人為的資源や物的資源など医療資源の必要度から、各患者を統計上意味のある分野に整理する方法が開発されました。この考え方をもとに、各国がそれぞれの国の実態に即した形に応用したものが診断群分類となります。そして、日本では独自の臨床的な類似性と資源消費の均質性に基づいた患者の分類をDPC=診断群分類としています。

 

DPCという呼称については、これまで上記意味合いである「診断群分類」を意味する場合と、「診断群分類に基づく1日あたり定額報酬算定制度」を意味する場合とが、混在していることが多かったことから、両者の使い分けを明確にすべきとの指摘がありました。そこで、平成22年12月に、DPCを「(診断)と(処置)を組合せた分類(診断群分類)」とし、「診断群分類に基づく1日あたり定額報酬算定制度」をDPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination / Per-Diem Payment System)として、両者が整理されました。

 

制度としてのDPC(DPC/PDPS)

 

このDPC制度(DPC/PDPS)導入の背景としては、従来の急性期医療における診療報酬体系は、診療行為ごとの出来高払い方式であり、いくつかの問題点が指摘されていたことが挙げられておりました。それは、

 

DPC制度の問題点とは?

 

個別の診療行為には、きめ細かく対応することができるが、その結果、過剰診療となってしまうことがある

医療技術評価や医療機関の運営コストが必ずしも適切に反映されていないこと,医療の質や効率性の評価が十分でないこと

 

などの点です。そこで、この問題点を整理、改善する目的でDPC制度(DPC/PDPS)を導入し、医療の標準化、透明化などに役立てようとしました。

 

DPC制度(DPC/PDPS)の対象となる患者は、DPC対象病院(1,730病院、約49万床)の一般病床入院患者のうち、「診断群分類点数表」にある診断群区分(4296分類)に該当する患者となります。(手術等の内容によっては、一部対象外となる患者もいます。)

 

また、診療報酬の算定方法は、包括評価部分と出来高評価部分とを合わせた合計額になります。包括評価部分の範囲は、いわゆるホスピタルフィーと呼ばれる要素を基部としており、入院医療に必要となる基本的費用、つまり施設使用料などが該当します。そして、これらをDPCごとに決められた、1日当たりの診療報酬額が支払われます。出来高評価部分の範囲は、ドクターフィー的要素、つまり医師個人の技量を評価する要素が強く、初診料、手術料などが該当します。これらは、患者のケースによって多様な為、包括評価をすることは難しく、出来高評価となっています。この2点を合わせたものが、DPC制度(DPC/PDPS)における診療報酬となります。

 

尚、包括評価部分にあたる1日当たりの診療報酬額は、入院期間及び、医療機関ごとに設定された係数(医療機関別係数)を乗じて算出される。入院期間は、入院期間Ⅰ(各DPCの25パーセントタイル値に相当する在院日数まで)、入院期間Ⅱ(入院期間Ⅰを越え平均在院日数まで)、入院期間Ⅲ(入院期間Ⅱを越え平均在院日数+2×標準偏差まで)の3段階の逓減性となっております。入院期間Ⅰ~Ⅲを越えた場合は、出来高での支払いとなります。医療機関別係数は、機能が高い病院ほど1日当たり保活診療報酬は高くなります。

 

まとめ

 

診療報酬とDPCに関しての内容いかがでしたか?病院の収入源である診療報酬に関しての内容を知っておくことで病院経営に関しての理解を深めていただければと思います。

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