医療機器

次々と新製品がリリースされる医療機器

 

先生方もご存知の通り、医療機器の進歩は日進月歩の様相を呈しており、新しい技術を駆使した製品が次々とリリースされています。今まで少々不満を覚えていた機能や使い勝手が解消されるとなれば、開業の暁には「自分のクリニックに最新型を導入したい」と思われるのは当然のこと。しかし、決して少なくないコストがかかるものですから、“最新・最高スペックであるか否か”だけの判断基準で選定すべきではありません。借入やリースを利用するなら固定費として毎月の負担になってくるのでなおさらです。そこで今回は、医療機器を賢く選定するためのポイントをお伝えします。もちろん診療科目によって必要な機器は異なりますが、選定の基本的な考え方自体はそう変わるものではありません。以下の要点を抑えて、無駄のない医療機器導入を実現しましょう。

 

導入に値するかどうか、2つの条件でフィルタリング

 

選定にあたっては、ご自身の診療方針や得意分野にマッチした機器を、まずは「集患」と「収入」の面から見た2つの条件でふるいに掛けるのがおすすめです。選定の最初の段階から費用対効果を意識でき、いわゆる「高い買い物」を避けることができるからです。クリニック経営は機器選定に限らず何事もバランス感覚が必要となってきます。決断の際は、常に複数の視点を持って事に当たるようにしましょう。一つめの、集患のための条件とは「開業エリアでのニーズが高いこと」です。いくら性能の良い機器であっても、需要のない場所ではその能力を活かせません。地域住民の年齢・性別構成などからその機器がどのくらい必要とされているかを予測し、稼働率を試算して判断しましょう。とくにMRIやCTのように高額な医療機器を検討しているなら、近隣医療機関の整備状況は把握しておく必要があります。場合によっては競合する機器の購入を避け、導入済みの医療機関と連携を図るのも良いでしょう。これら一つめの条件でフィルタリングする際には、開業地選びの際に行う診療圏調査のデータが役に立つはずです。

 

経営者の視点からも導入機器を検討

 

二つめの、収入のための条件とは「収益性の高い機器であること」です。平たく言えば「検査収入が多く見込めるなど、診療報酬の高い医療機器を選びましょう」ということ。クリニックの医業収入(1初診料・再診料、2投薬料・注射・処置、3検査料・画像診断料)のうち、検査料・画像診断料は全体に与える影響が大きいため、機器の収益性は無視できません。いち勤務医であればいざ知らず、クリニック経営者として成長していくためには、このようなお金に関するビジネスセンスも磨いていくようにしましょう。なお収益性の高さの判断は、先ほど試算した稼働率から単位期間あたりの収入を見積もることでも行えます。地域ニーズもあり、収益性も高い機器の見当がついたところで、いよいよ機種を絞り込んでいきます。使いやすさはどうか、搬入・設置が院内レイアウトに収まるか、給排水経路・電源容量の確保はできるか、などについて細かく検証してみて下さい。複数の機器を購入するなら、全体予算の中で最適な組み合わせになるように気を配ることも重要です。医師と経営者という両方の立場から、投資に見合った最大限の成果が得られる機器を選択なさって下さい。

 

リースに比べ支払い金額が抑えられる買い取り

 

クリニックの開業準備において、医療機器の選定は頭を悩ませる難問です。しかし問題はそればかりではありません。迷って決めたその機器を買い取る(購入)のか? リースにするのか? クリニックに迎え入れる手段についても慎重に検討する必要があるのです。

機器を買い取ってしまうメリットとしてあげられるのが、リースに比べ多くのケースで支払い総額が抑えられること。購入のため借入する場合でもリース料率より低い金利であることが多いため、月々の支払いについても安く済みます。さらに取得価額500万円以上など、高額な医療機器に対する税制上の優遇措置もあり有利です。ただし減価償却費用や損害保険料など、複雑な会計処理が発生することは頭に入れておきましょう。将来、新機種に買い替える際には、処分料が発生することや業者に買い取ってもらうなど、廃棄コストや手間が発生することも忘れてはいけません。

 

医療機器の“賞味期限”によっても判断する

 

一方、リースは契約の際に多額の資金を準備しなくてよいという気軽さがあります。金融機関からの借入枠を使わないため、開業資金を別の投資へと回すこともできるでしょう。さらに全額経費として計上でき、会計処理も簡単。買い取りに比べ支払い総額が増えてしまうことを除けば、便利に使える仕組みとなっています。

 

こうなるとトータルコストの差で買い取りを選ぶか、導入の手軽さでリースを選ぶか迷うところですが、ここで検討の視点をもう一つ加えてみて下さい。それは、各機器の“賞味期限”。つまり「この先どれだけ第一線で使えるか」という視点です。ひと言に医療機器といっても様々な種類があります。機器に搭載されている技術がすでに成熟したものか発展中のものかで、耐用年数とは別の“使える期間”が見えてくるはずです。例えばX線装置など基本的な技術や構造に今後大きな変化がなさそうな機器は、CTやMRIといった先進機器よりも比較的長く使えるといえるでしょう。このような機器は買い取りを選択して代金の支払い後もずっと使えば、“元を取る”ことが可能です。逆に、技術革新とともに新製品が頻繁に発売されるような機器ならば、リース契約を選択することで常に最新型での医療を患者に提供できるのです。機器の特徴によって買い取りとリースを使い分けることも、ぜひ検討してみて下さい。

 

機器の最新情報は日頃から積極的に集めておく

 

しかしながら買い取りかリースか、検討の余地がない場合もあります。金融機関からの融資のめどが立たず、機器導入にあたってリースしか選べない時です。この場合でも、先に述べた機器の賞味期限の考え方を用いてみると良いでしょう。具体的には、リース期間を機器別に設定し契約を結ぶのです。長く使えそうなものはリース期間を長めに、モデルチェンジやバージョンアップが早そうな機器は短めにしておけば合理的です。もちろん機器ごとに個別の契約が可能かはリース会社に確認すべきですし、法定耐用年数による適正リース期間との兼ね合いもありますが、対応をお願いする価値はあるでしょう。また、日頃から各医療機器についての最新動向をチェックしておくと、どれだけ長く使えるかの予測が立てやすくなります。将来ご自身のクリニックで使うかもしれない機器の情報は積極的に集めておきましょう。