猫伝染性腹膜炎 FIPについて詳しく知ろう!

 

猫伝染性腹膜炎=FIPとは、Feline Infectious Peritonitisの略で、猫がかかる恐ろしい病気のひとつです。一度発症してしまうと、ほぼ100%猫が命を失う病気であるため、飼い主さんは、伝染性腹膜炎についてよく知っておく必要があります。さらに、伝染性とあるので、猫にどのようにうつるのかも気になりますね。

今解明されている範囲の中で、FIPという病気がどのようなものなのか、症状などを 解説します。

 

 

 

□FIP(猫伝染性腹膜炎)とは

FIPを引き起こす大元の原因は、猫腸コロナウイルス(FECoV)というウイルスです。この猫腸コロナウイルス自体はとても弱いウイルスで、過去に一度感染したことがある猫はたくさんいます。

成猫が感染しても、症状が見られないことがほとんどですし、免疫の弱い子猫でも、たまに弱い下痢を起こすことがある程度で、普通に生活することができます。

しかし、この猫コロナウイルスが何らかのきっかけで、稀にFIPウイルスに突然変異を起こしてしまうことがあります。このFIPウイルスは非常に毒性が強いウイルスで、一旦発症してしまうとほとんどの猫は助かりません。

残念ながら、突然変異をする原因はまだ解明されていません。

 

□感染するとどうなるの?

FIPに感染してしまうと、発症するまでの潜伏期間が数週間~数ヶ月あります。
そして一旦発症すると、効果的な治療法がなく、発症後には短いもので数日から10日前後ほどで、猫は死に至ってしまうとされています。

症状を一時的に和らげることはできますが、完治させることはできず、特効薬ワクチンもありません。

治療で症状が軽くなる場合もありますが、再び症状が悪くなって、ほとんどの猫が死んでしまいます。

詳しいことはまだ解明されていませんが、免疫の過剰反応で体が壊れていくのではないか、とも言われています。

 

□猫伝染性腹膜炎(FIP)は他の猫にうつる?

猫伝染性腹膜炎は、多くの猫がすでに持っている「猫腸管ウイルス」が何らかの原因で猫の体内で突然変異をして「猫伝染性腹膜炎ウイルス」になり、発症すると考えられています。

猫腸管ウイルスは、病原性が弱く、多くの猫に感染歴があるウイルスです。そして猫腸管ウイルスは、猫同士のグルーミングやトイレを共有することで、唾液や便、鼻汁、涙などが猫の口に入りうつるものです。

猫腸管ウイルスに感染しても、ほとんどの猫は無症状か、下痢が短期間起こる程度で、自然に回復します。
しかし、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異して発症すると、発熱したり元気がなくなったりし、下痢や嘔吐が見られ、その後に腹膜炎などの病気で症状が重くなり、死に至ることになります。

猫伝染性腹膜炎は、猫伝染性腹膜炎ウイルスに変異する前の猫腸管ウイルスがうつることで、結果的に発症すると考えられます。

また、すでに猫伝染性腹膜炎(FIP)ウイルスを発症した猫の便に触れることでも、他の猫に感染する可能性が指摘されています。

どのような原因で猫腸管ウイルスが猫伝染性腹膜炎ウイルスになり、FIPを発症するのかについては、次のようなことが考えられます。

・猫のストレス
・他の病気により免疫力が落ちる
・猫の年齢
・猫の遺伝

特に猫のストレスは、猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症に大きくかかわっていると考えられます。

 

□猫伝染性腹膜炎の症状は?

猫の猫伝染性腹膜炎(FIP)の症状は、その特徴から、ウェット型とドライ型の大きく2種類に分けられます。

全体の割合では、ウェット型が60~70%、ドライ型が30~40%となっています。ただし、はっきり区別できないことも多く、どちらの症状も現れることがあります。なぜ症状が別れるのかという理由ははっきりしていませんが、免疫の反応具合によって異なるのではないかと考えられています。

ウェットタイプ症状

  • 脱水症状
  • 貧血症状
  • 黄疸が見られる
  • 下痢やおう吐
  • 腎臓肝臓機能の低下
  • 呼吸が苦しそう
  • 便秘

ウェットタイプ症状は猫の腹や胸に水が溜まるのが特徴です。ウェット型(滲出型)とは、血管からタンパク質が漏れ出て、周りにたまってしまう状態のことです。

滲出液は、主に腹膜腔や胸膜腔、心膜腔にたまり、たまった場所が大きく膨れてしまいます。腹水や胸水は、発症して悪化すると実際に膨れて見えますので、飼い主さんでもわかるようになります。

猫によっては脱水症状や貧血症状がみられ、黄疸やおう吐、下痢、便秘を繰り返すこともあります。

 

ドライタイプ症状

  • 神経障害
  • 歩行障害
  • 腎臓や肝臓の障害
  • 視覚障害
  • てんかんや性格の変化
  • 異常行動

猫に神経障害、歩行障害、腎臓や肝臓の障害、視覚障害などが見られ、てんかんや性格の変化、異常行動を経て死に至ります。ウェットタイプより症例は少ないですが、そのぶんドライタイプのほうが予後は悪いと言われています。

またウェットタイプと違い、猫の腹や胸に水が溜まることはありません。そのため、こちらをドライタイプといいます。

 

□診断方法

猫伝染性腹膜炎(FIP)の発症が疑われる場合の診断方法ですが、見た目で猫のお腹、又は胸に水が溜まる腹水貯留や、体液の貯留がない黄だんがあるかを確認します。それらの症状が見られた場合、血液検査を行い、高たん白血症が出ていればFIP抗体を測定し、それで高い数値が出た場合に猫伝染性腹膜炎(FIP)と確定します。

この病気は、「この検査をすればわかる」といった確定診断の方法が無く、症状や生活環境、色々な検査をして相対的に判断するしかありません。
 ウェットタイプであれば腹水や胸水を抜いて検査をすることができますが、ドライタイプの場合はそれも難しく、診断に非常に時間がかかります。また、そもそも症例によって症状がかなり異なることも多いのです。
 なかなか病名が確定しないと飼い主さんも不安になりますが、猫伝染性腹膜炎については診断に時間がかかるということを、ご理解いただく必要があるでしょう。

 

 

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、発症してしまうと、効果的な治療法がなく、猫の命にかかわる病気です。猫伝染性腹膜炎ウイルスが突然変異する元となる猫腸管ウイルスは、猫から猫へうつり、多くの猫が感染歴のあるウイルスです。猫伝染性腹膜炎はワクチンや特効薬がないため、発症させないようにすることが予防となります。特にストレスを感じることがよくないので、完全室内飼いをし、猫が安心して楽しく暮らせるような環境を作るようにしてください。