知らないと損する失業保険

 

みなさんは失業保険の仕組みをご存知でしょうか?

会社を辞める前にしっかり知っておかないと、退職後に生活資金を受け取れない、もしくは受け取ることのできる日数が減るなど損をしたり、時にはトラブルにつながったりすることもあります。

今回は失業保険について分かりやすく解説していきます。

 

【失業保険とは】

失業保険とは、正式には雇用保険と呼ばれるもので、会社などで勤務をしている間に給与天引きで保険料を支払う公的保険制度の一つです。

勤務先を何らかの事情で退職しなければならなくなったとき、次の仕事が見つかるまでの間、国から失業手当(正式名称:基本手当)が給付されるというしくみの保険です。

 

【なんの為にあるのか】

失業保険が支給される目的は、大きく分けて次の2つがあると言われています。

1.失業中の生活維持のため

多くの労働者にとっては、給与が唯一の生活の糧を得る手段ですので、失業者には基本的に給与の代わりとして基本手当が支給されます。

2.失業中の再就職活動を容易にするため

足元の生活のために、単発的な仕事やアルバイトに追われると、失業期間が長引いたり、十分な検討期間のないまま急いで再就職してしまい、うまくマッチせず長続きしないなど、不安定な就労状況に陥ったりするおそれがあります。

失業者が安心して再就職活動に集中できるようにすることも、基本手当の存在意義です。

 

【失業保険の受給資格がある人】

失業保険は退職すれば誰でも受け取れるわけではなく、一定の受給資格条件を満たす必要があります。

まず、会社を退職して仕事がない状態であることが大前提です。退職したとしても、期間を空けずに再就職して給与を受け取っている場合は失業保険が適用されません。

また、就職する意思と能力があり、求職活動を行っていることも必要な条件です。求職活動はハローワークで所定の手続きを済ませる必要があり、個人的に転職サイトなどで求職活動しているだけでは失業保険の対象外となります。

さらに、退職前の2年間のうち、雇用保険の被保険者となっていた期間が12カ月以上あることも重要なポイントです。12カ月以上にカウントされるのは「賃金支払いの基礎となった日」が1カ月のあいだに11日以上ある月に限られます。

賃金支払いの基礎となった日とは、簡単に言えば出勤日や有給取得日などのことです。つまり、会社に12カ月以上勤めていたとしても、毎月10日ずつしか出勤していなければ雇用保険の被保険者期間としてカウントされないため、受給資格がないことになります。

【失業保険の受給資格がない人】

会社を退職しても、場合によっては失業保険の受給資格が得られないケースもあります。

たとえば、退職後は就職活動をせずしばらくゆっくりと過ごす人、退職後すぐにアルバイトなどの仕事を始める人は、失業保険を受給できません。そもそも失業保険は「働きたいのになかなか仕事に就けない人」の生活費をサポートするために定められた制度です。

退職後にしばらく休養する人やすぐに働ける人などは、失業中とはみなされないため受給資格が与えられないのです。

また、妊娠や出産、育児ですぐに働けない人も失業保険の対象外となります。失業保険を受給するための条件には「就職する意思と能力」を備えていることも含まれています。

妊娠や出産、育児をしなければならない場合、今すぐに働けるとは限らないため、受給資格を満たしているとはみなされないのです。同じ理由で、病気やケガなどの治療のために退職した人も、受給資格がないことになります。

ただし、病気や妊娠、出産などでやむなく退職した場合は、失業保険の受給期間を延長してもらえる制度もあります。

この制度を利用すれば、育児が落ち着いたり体調が回復したりして再就職を希望する場合、あとから失業保険の給付を受けられるのです。ハローワークへ「失業保険受給期間延長申請書」を提出すれば、最長で3年間受給期間を先延ばしできるので、該当する場合はハローワークに相談してみましょう。

 

【受給額はどれくらいになるのか?】

はたして失業保険で受給される額は、どれくらいの金額なるのでしょうか? 榊さんに計算方法を伺いました。

失業保険の受給額は、次の計算式で算出されます。

『失業保険の受給額=基本手当日額×所定給付日数』

 

基本手当日額とは

一日当たりの受給額のことで、賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180)に、「給付率」という係数をかけて算出します。

注意点!
・賃金日額には年齢に応じた下限額と上限額があります。
・給付率は年齢と賃金日額に応じて、45%~80%の範囲で決まりますが、複雑な計算式に基づくので、ハローワークに問い合わせて確認しましょう。

 

【所定給付日数とは】

受給できる日数のことで、年齢や退職理由などの条件に応じて決まります。

A.「自己都合退職」および「その他」の場合

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B.「会社都合退職」の場合(一部の「正当な理由のある自己都合退職の場合」を含む)

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(参考:「基本手当の所定給付日数」ハローワークインターネットサービス

 

【失業保険のメリット】

経済面で安心できる

手続きは大変ですが、失業保険を受け取ると「経済的に安定する」という大きなメリットが得られます。全額ではないものの、退職前の給与の何割かを受け取れるため、再就職先が決まらなくてもある程度の日常生活は維持できるでしょう。

生活費のために焦って就職先を決める必要もないため、自分がやりたい仕事をじっくりと探すことができます。また、失業保険は課税対象外であるため、確定申告など余計な手間がかかる心配もありません。

ただし、受給できる金額や期間は人それぞれなので、自分はどれくらいお金を受け取れるのか、あらかじめ計算して計画的に求職活動を行うことが大切です。

また、失業保険を受け取るにはハローワークで手続きを行う必要があります。ハローワークは求職活動をサポートしてくれるプロの職員や設備が整っているため、効率よく就職先を探せるという点もメリットです。

職業訓練を受けられたり、不安な点を相談したりすることもできますし、一般的な求人サイトには載っていない求人情報を見つけられるケースもあります。給付を受け取りつつ、このようなサポートを受けられるのは、失業者にとって大きな魅力ではないでしょうか。

 

【失業保険のデメリット】

1.空白期間ができてしまう

働かなくてもお金を受け取れるなどメリットのある失業保険ですが、デメリットもあるので楽観視しすぎないことも大切です。まず、失業保険を利用すると「仕事をしていない空白期間ができる」という点には注意しましょう。

一般的に、転職する際は前の会社を退職してからの空白期間が短いほど有利とされています。空白期間が長いと「この期間君は何をしていたの?」と企業の採用担当者から不審に思われてしまうというわけですね。

失業保険を受け取って経済的な不安が少なくなると、急いで就職活動を行う必要がなくなります。これはメリットでもあるのですが、一方でのんびり再就職先を探すことで「働かない空白期間」が長くなり、転職に不利になってしまう可能性もあるのです。

また、長く働かないことで規則正しい生活から遠ざかり、心身の健康に悪影響が及ぶリスクもあります。働く意欲や活力が失われ、なかなか本腰を入れて就職活動に集中できないケースもあるので注意しましょう。

 

2.雇用保険の加入期間が0になる

失業保険を受け取るデメリットとしては「雇用保険の加入期間がゼロになる」という点も挙げられます。一度失業保険を受け取ると、その時点で雇用保険の加入期間はゼロにリセットされてしまいます。ほかの会社に就職した場合、ゼロから新たに加入期間がカウントされていくのです。

ここで注意したいのが、失業保険は雇用保険の加入期間が長ければ長いほど、より多くの失業手当を受け取れる仕組みになっているという点です。

つまり、一度加入期間がリセットされてしまうと、次の就職先を退職したときに失業保険が少ししかもらえないということになります。このため、すぐに再就職先が見つかりそうな場合はあえて失業保険を受け取らないのもひとつの選択肢です。前の会社から雇用保険の加入期間を継続させておけば「次の退職時により多くの失業保険を受け取る」ことが可能になります。

ただし、前の会社を退職してからほかの会社に再就職するまで、1年以上間が開くと雇用期間を継続させることができません。継続を希望する場合は、前の会社を退職してから1年未満のうちに新しい就職先を見つけるようにしましょう。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

失業保険につて解説していきました。

いざというときに経済的な助けとなる失業保険は、求職活動を前提とした給付金制度です。この仕組みや目的をきちんと理解し、正しく活用することが大切です。また、受給することはメリットだけではないため、デメリットと照らし合わせて本当に受給するのかどうか考えなければなりません。受給資格があっても、長い目で考えて本当に受給したほうが良いのか、慎重に検討することをおすすめします。