病院の人員配置に関して

医療・介護業界における専門用語。よく聞くだけで分かっているつもりになっていませんか?理解しておくと事業所の余裕が見えてくるかもしれない、人員配置基準・常勤換算・7対1看護について説明します。

 

一定の質を保つための人員配置基準

 

病院や介護施設などでは入院患者数や入所定員数に対して、医師・看護職員・介護職員などの人数が決められています。これは適正な医療・介護を行うために一定の数以上の人員を確保する必要があると考えられているためです。

 

たとえば、病院の一般病棟では「患者:医師=16:1」、「患者:看護師(または准看護師)=3:1」。これは、患者16名に対して医師が1名必要・患者3名に対して看護師(または准看護師)が1名必要という意味です。療養病棟では「患者:医師=48:1」、「患者:看護師(または准看護師)=4:1」。特定機能病院では「患者:医師=8:1」、「患者:看護師(または准看護師)=2:1」が定められた人員配置基準です。

 

また、介護施設は、老人保健施設では「入所者:医師=100:1」、「入所者:看護職員/介護職員=3:1(うち看護職員は2/7)」。特別養護老人ホームでは「医師は必要数(非常勤可)」、「入所者:看護職員/介護職員=3:1(うち看護職員は入所者30名以下で1名以上、31~50名で2名以上、51~130名で3名以上)」となります。

 

このように、医療・看護や介護の必要性のある施設ほど、人員配置基準が高くなっていること分かります。

 

さまざまな働き方の人がいても比較しやすい常勤換算

 

人員配置基準に出てきた人数は特別養護老人ホームの医師以外、すべて常勤の場合での人数になります。しかし実際に働いている人は常勤、フルで働く非常勤、短時間勤務の非常勤などさまざまです。

 

患者3名に対して看護師(または准看護師)が1名必要な一般病棟を例にします。常勤は週5日8時間勤務で週40時間の勤務と定められており、入院患者数30名なら常勤の看護師(または准看護師)は10名必要となります。これが常勤換算での10名ということです。

 

一方で、週4日5時間勤務で週20時間勤務の人を常勤換算で考えると、20÷40で0.5名。つまり、この勤務形態の人は2名で常勤1名として換算できます。常勤が8名でも、週4日5時間勤務の人が4名いれば常勤換算の10名になるので人員配置基準を満たしているということになります。このようにさまざまな働き方の人がいたとしても、常勤の勤務時間で換算すると何名分になるのか、という考え方が常勤換算なのです。

 

手厚い看護で話題!7対1看護の病院で働くメリット

 

初めに説明した人員配置基準とはまた違ったものである7対1看護。人員配置基準は、入院患者や入居者数に対して必要な雇用すべきスタッフ数でした。一方、7対1看護の7対1とは、看護師1名が入院患者7名を受け持つということです。この比率は、1日を平均したもので構わないということになっています。7対1看護は平成18年に新設された看護基準。それまでの10対1看護より手厚く安全に看護が受けられるようになりました。

 

患者にとって手厚い看護を受けられるという7対1看護ですが、働く側からみてもメリットがあります。看護師1名の担当患者数が少ないため負担が減ることや、勤務している看護師が多いため勤務面での労働環境がよい点です。また、7対1看護の基準を満たしていると診療報酬が高くなるため病院の経営状況が安定しており、給与面に表れることもあります。

 

このように人員配置基準や常勤換算、7対1看護などについて理解しておくと、事業所内での人員体制が余裕のあるものなのかどうか判断できるようになります。求人情報に人員体制について書かれている場合もあるので、意識してみるのもよいかもしれません。

 

「7対1」と「10対1」が一つになる日

 

一般病棟の入院基本料は現在、入院患者7人に対して看護師1人を配置する「7対1」、患者10人に対して看護師1人の「10対1」など、医療の内容に応じて異なる看護職員の数によって、病院に支払われる報酬が決まっています。

 

 次回の改定で、厚生労働省は、「7対1」と「10対1」を再編・統合しようという案を示しています。

 

この案によると、病院に支払われる報酬は、「基本部分」と「診療実績に応じた評価部分(実績部分)」の組み合わせになります。

 

 

このうち「基本部分」は、現在の「10対1」に相当する条件(看護配置、平均在院日数21日以内など)をクリアした病院に支払われるもの。さらに、重症患者の受け入れ割合などに応じた「実績部分」を段階的に設定し、基本部分に上乗せしようという考えです。

 

現在の「7対1」に相当する報酬は、「実績部分」の最高評価を上乗せすることで確保される見通しです。

 

国は「7対1」を減らしたい

 

「7対1」と「10対1」は、急性期医療を担う看護体制ですが、厚労省は、「高齢化によって今後、急性期医療のニーズは減少する」としています。

 

特に、診療報酬が高く、「ベッド数が増えすぎ」とも指摘される「7対1」の病床を削減したいのが本音です。次回改定で持ち上がっている病床の再編・統合案も、「10対1以上7対1未満」の評価を設けることで、「7対1」から「10対1」への移行を誘導する狙いがあります。

 

「十分な数の看護師を配置できない」

 

こうした流れに対して、「看護職員の配置が手薄になる懸念がある」と警戒しているのが、日本看護協会(日看協)です。

 

日看協は、「重症患者を受け入れる高度急性期・急性期の病院を評価するために、基本部分に7対1を追加するべきだ」と要望しています。

 

その根拠は主に次の2つ。

 

高齢化によって疾病構造が変わったとしても、がんや心疾患、脳血管疾患などの重症患者が一定程度いることは変わらない

重症患者に対応するには、7対1以上の手厚い看護配置がそもそも必須

 

重症度の高い入院患者がいるにもかかわらず、基本部分が「10対1」の報酬だけでは、十分な数の看護師を配置できないと指摘しています。

 

そうなれば、

 

医療安全上のリスクが高まる

ケアの質と量が低下する

身体拘束が増える

 

現場の看護職員の負担が増え、勤務環境がさらに悪化する

-といった事態も懸念されます。

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