病院における経費削減

病院コスト削減といっても、人の命を預かるところですから、削減にも十分な注意が必要です。注意というよりも鉄則といったほうが正しいかもしれません。

 

ここでは病院コスト削減のための4つの鉄則をご紹介します。

 

コスト削減の方針の提示

 

通常、コスト削減は上の指示で行われます。病院であれば音頭をとるのは院長ということになります。

 

院長の号令一下によって、コスト削減が行われます。とはいっても、コスト削減の指示は明確なものでなければ、現場は迷ってしまうでしょう。

 

また、コスト削減を行うのは現場で医療に従事する医師や看護師、事務方、作業療法士などです。現場レベルで行うのは、備品の無駄遣いをしない、用紙の無駄遣いをしないということに代表されます。

 

上のレベルでは、賃金制度の見直し、さらには取引先の変更などもあるでしょう。特に取引先の変更となると、現在の取引先と値段交渉をしながら、他の取引先の陰をチラつかせるといったテクニックも必要になります。

 

強引な手法をすると、適正な取引ができなくなるので注意が必要です。いずれにしても、コスト削減を行うにも上のレベルよりも、現場レベルで徹底させるには、コスト削減の方針をしっかりと指示する必要があります。

 

リーダーの育成

 

上から現場へのトップダウンは指示系統の流れとしてはとても大切です。それでも、上からの指示を適切かつ正確に行うには、現場や中間管理職の強いリーダーシップが必要です。

 

急がば回れではありませんが、病院コストの削減を実行したいのであれば、その前にリーダーを育成することが大切です。話の流れから、上からの指示を忠実に実行する「イエスマン」の育成が望まれると思いがちです。

 

しかし、自分の考えで臨機応変に対応することができるリーダー像が理想です。また、イエスマンであれば部下からの指示を得る事は難しいでしょう。

 

病院コストの削減には、病院全職員の全面的な協力が必要なのは言うまでもありません。優れたリーダーであれば、病院経営に何が必要で、どのようにコスト削減をするべきか、また上層部の考えを的確に理解するでしょう。

 

また、現場思いであることも大切です。上からの指示と下からの突き上げで損な役回りですが、難しい役目をそつなく的確にこなすリーダーの育成は、病院のコスト削減に欠かすことはできません。

 

当事者意識の徹底

 

上層部からの指示、リーダーの指示があっても、それを実行する職員の意識がコスト削減と乖離していれば意味がありません。コスト削減の対象が自分のお金ではなく病院のお金ということで、どこか当事者意識に欠けてしまうのです。

 

病院はつぶれないといった、楽観的な気持ちが支配しているのかもしれません。過度な危機意識を持つ必要はありませんが、それでも、コスト削減が結果的に自分たちの利益になるということも、コスト削減の指示の中に織り込むようにしてもいいでしょう。

 

当事者意識の徹底は、病院のコスト削減に欠かすことはできません。実行するのが職員なので当然のことですが、そこが一番の鉄則といえます。

 

ときには、荒療治として決してウソではないのですが、「経費がかさめば給料カットもあり得る」といったことも宣言したほうがいいかもしれません。まずは、職員に当事者意識を持たせることが大切になります。

 

お金をかけない方法を考える

 

病院コストの削減テクの最たるものは、お金をかけないことです。これは何よりもシンプルなことですが、言ってしまえば簡単です。

 

しかし、これを実行することが難しいので、誰もが頭を悩ませてしまうのです。それでも、「これはお金をかけなくても他に良い方法があるのではないか…」と、常に問題意識を持つことはとても大切です。

 

たとえば、巨大な看板を設置しても、人の目に触れなければ意味がありません。何カ所も設置するよりも設置箇所を少なくしても、宣伝効果に違いがないかもしれません。

 

実行して検証するには時間がかかりますが、そういった問題意識を持ち、ときには果敢に実行することも大切です。お金をかけないことを考えることはとても大切なことです。もちろん、お金をかけなくてはいけないところはたくさんあるので、まずは、小さなことから始めてみるのもよいでしょう。

 

病院コストの削減(固定費の場合)

 

損益で考える場合、固定費の削減を真っ先に考えるべきです。固定費とは、毎月決まった額が出ていくお金です。一般の家でしたら、住宅ローンなどが筆頭で、光熱費なども固定費にあたります。

 

もちろん給料なども固定費に含まれます。ここでは、病院コストの削減を固定費の場合について考えてみます。

 

固定費を変動費に

 

支出については、固定費ともう一つ変動費があります。固定費と対比する形となる変動費は、その名前の通り、売上や患者数に連動して変動する支出です。

 

それでは、固定費を変動費に変えるというのはどういったことでしょうか。実は、「利益を上げるためには固定費を変動費に変えたほうがいいですよ」というのは、経営コンサルタントの常套句です。

 

こういってしまえば聞こえが悪いのですが、これは、経営手法の鉄則と言えます。固定費が経営を圧迫している…経営者がよく思うことです。

 

そうなると、経営コンサルタントの言っていることは正しいと言えるのですが、ここでいう固定費を変動費に変えるというのは、人件費の事を指しています。

 

察しの良い人は、人員整理と考えがちですが、これも一つの方法です。また、正規雇用を止めて非正規(パート職員)を増やすのも同様です。

 

病院経営の中では、アウトソーシングできる部分は少ないと思いがちですが、それに果敢に挑戦している病院もあるようです。

 

荒療治としては、毎月の給料などベースアップを廃止して、賞与を増やした病院もあります。定期昇給の抑制も固定費を変動費化する一つの手法です。

 

労使の合意も必要ですし、同一労働同一賃金などの問題もあるので、一筋縄ではいきませんが、固定費の変動費化を経営者としては考えてみるのも必要なことです。

 

積み上げることの重要性

 

こちらは単純な方法です。昼休みや外来がいないときなどは照明を暗くするなどの対処を行うのです。

 

病室などは難しいとは思いますが、廊下などでは可能でしょう。光熱費の節約となると微々たるものと思いがちですが、大きな総合病院クラスとなると、かなり大きな節約となります。

 

仮に、一日の節約費が100円であっても、結果は大きく違ってきます。「微差が大差を生む」という言葉もあります。

 

一日100円の節約でも年間では36,500円です。これは大きな削減といってもいいでしょう。