各診療科の特徴&傾向

どの診療科も人々の健康にとって欠かせず、その役割の重要性に差はないです。ただ、診療科によって対象となる患者や診療内容が異なるゆえに、勤務実態に違いがあるのも事実です。医師数の多い診療科をいくつか取り上げて、その特徴や今後の傾向について見てみましょう。

 

まず、一般的に医学生に人気があるといわれるのが内科です。診療する領域が広く、生活習慣病や高齢者の慢性疾患の増加など、治療機会が増えることが予想されます。開業医向きでもあり、開業すれば高収入も期待できます。ちなみに開業医の年収としては産婦人科や眼科のほうが高いというデータもあります。

 

その産婦人科は、深夜勤務の多さや高齢出産の増加による医療リスク回避の流れもあり、10年ほど前までは毎年医師数が減っていました。しかし、労働環境の改善や医療保障制度の充実により、近年は再び増加傾向にある。生殖医療は将来性のある分野でもあります。

 

内科、外科に続いて医師の数が多いのが整形外科。高齢者が増えることで、転倒や骨粗鬆症による骨折が増えており、今後さらにニーズが高まることが予想されます。生命に関わる疾患が比較的少ないことも人気の要因の1つなのかもしれないです。

 

整形外科に続いて医師数が多いのが小児科です。子どもが好きで、小児科の医師になりたいと医学を志す人も少なくない現状です。比較的、開業しやすい診療科でもあります。ただ、患者である子どもの治療だけでなく、母親へのアドバイスなど保護者対応に多くの時間が割かれるという声もあります。

 

「やりがいは大きいが、過酷」というイメージが強いのが救急科です。調査によって異なるが、他の診療科より勤務時間が長いというデータが多いです。しかし、緊急事態に持てる知識と技術を駆使して生命を救う救急医を、本来の医師の姿と見る向きも少なくないです。高齢化の進展で、ますます重要度が増すとの指摘もあります。

そのほか、常勤医不足がいわれる麻酔科や、ストレス社会でニーズが高まる精神科なども今後は需要が増えると見られています。

 

初期臨床研修とは?

 

〜身体全体を診る臨床能力を育成〜

 医師国家試験に合格すると、次のステップとして2年間の「初期臨床研修」が待っています。以前から任意の研修制度はありましたが、2004年に制度化され必修となりました。その背景には、2000年前後から多発していた医療事故の再発を防止し、改善につなげようという狙いがありました。

 

制度化によって、その中身も大きく変わりました。以前の研修は、1つの診療科に所属し、その領域だけの経験を積む「ストレート方式」と呼ばれるスタイルが一般的でした。しかし、これではあまりにも若いうちから専門分野だけに凝り固まってしまい、その領域以外の診療には対応できなくなるという問題が指摘されていました。

 

 そこで、初期臨床研修では、幅広い知識と医療技術を持った医師の養成が重視されるようになりました。病気やけが、急病など、さまざまな症状を訴える患者に対して、適切な治療を施す基礎的な臨床能力の習得が求められています。具体的には、2年間の研修期間中に、内科(6カ月)、救急医療(3カ月)、地域医療(1カ月)の3つを必修診療科目として学び、さらに選択必修診療科目である外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の5つの中からいずれか2つを選ぶというもので、これを「スーパーローテート方式」と呼びます。多領域にわたる診療科を経験することで、疾患や臓器という観点から診るのではなく、患者を一人の人間として診察し、身体全体を診ることのできる医師を育成しようとしているのです。

 

こうした改革に伴い、「臨床研修マッチング制度」も導入されました。これは学生側の希望と、受け入れる病院側の希望をコンピューターでマッチさせて研修先を決めるというシステムで、医学部6年次に実施されます。

 

かつては、卒業後はそのまま大学の医局に入るというケースが多かったです。しかし、マッチング制度の導入によって、出身大学とは違う大学病院や一般病院で臨床研修を受けることが一般的になり、将来の選択肢も広がることになりました。

 

 

ほかにもある医師の仕事

 

〜国境なき医師団、法医学者、弁護士など〜

 

医療が必要とされる舞台は、今や病院だけにとどまらないです。老人施設などに勤務する高齢者医療専門のドクターは、これからの高齢化社会で需要が高まりそうな職業です。もしくは、在宅医療を専門に診療し、地域の健康を支えるケースもあるでしょう。

 

医療の力で国際貢献に奔走する「国境なき医師団」は、フランス発祥の民間非営利団体です。シリアなどの紛争地域や、ネパール大地震などの災害被災地のほか、途上国の貧困地域などで医療援助活動を行っており、日本人医師や看護師も含めて3万8000人以上のスタッフが約70の国と地域で幅広く活躍中です。こうした活動が認められ、1999年にはノーベル平和賞も受賞しています。

 

ここ最近、テレビドラマなどで注目が高まりつつあるのが「法医学者」です。裁判所に提出する証拠資料の検査や鑑定に携わり、事件・事故の真相解明へと立ち向かってゆきます。民事訴訟では、DNA親子鑑定などの依頼も請け負うこともあります。主な勤務先は、大学の法医学教室や研究機関となります。

 

また、プロのスポーツチームに所属して選手の医学的サポートに従事するスポーツドクターもいる。スポーツドクターになるための資格は、「日本医師会認定健康スポーツ医」「日本体育協会公認スポーツドクター」「日本整形外科学会認定スポーツ医(整形外科専門医のみ)」の3種類がある。

 

少数だが、医師免許取得後に法科大学院に入学し、弁護士へ転身する“強者”もいます。ダブルライセンスの専門性を生かして、医療訴訟などを得意分野とするほか、医療政策の立案などでも活躍することが可能です。

 

「専門医」資格ってなに?

 

〜取得しないと昇進に不利な場合も〜

 

先に書いたように、初期臨床研修の目的は、医師として必要な基本的診療能力を身につけることです。そして、その後に続く後期臨床研修(短くて3年、長い人では7年程度)では、自分の専門分野の医療技術と知識を習得していくこととなります。

 

この後期臨床研修の課程において、ほとんどの医師が目指すのが「専門医」の資格取得です。専門医の資格認定は、現在のところ、日本内科学会や日本外科学会など学会が行っています。これを取得した医師は、それぞれの専門領域における十分な知識と経験を持ち合わせていると公式に認められます。必ずしも取得しなければならないわけではないですが、資格の有無は病院内での昇進、他の病院への転職にも影響するようです。

 

資格取得のためには、各学会が指定する施設で所定の研修を受け、論文提出や学会発表などの課題をクリアする必要があります。なお、認定については、2018年度から導入予定の新専門医制度で、第三者機関「日本専門医機構」が専門医の養成や認定を行うこととされています。