MaaSとは?
私たちは目的地まで行く際、自家用車や公共交通機関、タクシーなど様々な方法を選んで移動します。
しかし自家用車であればガソリン代や維持費なども非常にかかることや、公共交通機関を利用するのであればその経路や乗換え、移動に必要な切符などの予約など手間がかかります。
時間もかかりますし、上手くいかなければ時間をロスする事にもなりかねません。それらの問題を一挙に解決し、しかもスピーディーかつ簡単に移動できるサービスがあればいかがでしょうか。
それを実現できるのが、今後日本での普及が期待されるMaaSというサービスなのです。
こちらではそんなMaaSについて基礎知識を紹介します。
MaaSとは
まずは基本的な知識としてMaaSとはなんなのか、その説明からさせていただきます。
MaaSとはMobility as a Service(モビリティ・アズ・ア・サービス)の略であり、直訳すればサービスによる移動という意味を持ちます。
1人1人、その住んでいる地域や移動手段によって、最適な方法は異なります。これを個々人のレベルで最適化するために、利用可能な移動手段を活用し、利便性を高めたものになります。
少し具体的な話をすると、例えば住んでいる地域で利用できる移動手段がバスや電車、タクシー、レンタカー、レンタサイクルなどがある場合、これを目的の場所へ行く上でニーズに合わせパッケージ化し、定額で提供されるサービスとなります。
これはどのような利点があるのでしょうか。
まず車の所有から解放されるというメリットがあります。車があるのは便利ですが、維持費や年間の自動車税など何かとお金がかかります。
また駐車場も必要なくなります。借りていた場合は駐車場代が浮きますし、所有していた場合もその空間を別のことに活用できます。
最適化することによって、より多くの時間を使えるようになるため、結果として利点が多くなるということになります。他にも環境汚染の減少、交通トラブルの低減、通勤・通学の質の向上などMaaSの導入は個人レベルだけでなく、社会全体の利益にも繋がります。
MaaSがもたらすメリット
MaaSが普及すると、交通手段の選択肢が拡大し、マイカーを持たなくても気軽に便利に移動できる環境が整備されます。加えて、地方部や都市部では、次のような課題の解決も期待されます。
・地方における交通手段の維持・確保
高齢者の運転免許の返納も増える中、人口減少の本格化、運転者不足の深刻化などに伴って、移動手段が不足する地域が今後ますます増えていくことが懸念されています。
AIデマンド交通(※)など地域の輸送サービス・移動手段の維持・確保を図りながら、MaaSを活用することで、地方でも、自ら運転することなくドア・ツー・ドアで便利に移動する環境が整備されると考えられます。
※AIデマンド交通とは
AIを活用することで利用者予約に対し、リアルタイムに最適配車を行うサービス。定まった路線を持たず、配車予約と車両位置からAIがリアルタイムに最適な運行ルートを決定するため、乗合をしつつ、概ね希望時間通りの移動が可能となる。個々の移動ニーズに対応しつつ、低コストで一定数の人が同時に移動可能。
・都市部での渋滞の解消
ヘルシンキで普及しているMaaS「Whim(ウィム)」は、定額で公共交通機関が乗り放題になるサービス。このような移動サービスによって、利用者が最も望む交通手段が手軽に使えると、マイカーの利用者が減り、交通渋滞の緩和、駐車場不足や路上駐車、排気ガスによる環境問題などが解消されると期待されています。
日本におけるMaaSの実証実験
日本ではまだまだ一般的にMaaSが普及しておらず、実証実験の段階です。都市と地方、観光地など、地域によって交通が抱える課題は異なるため、「大都市近郊型・地方都市型」、「地方郊外・過疎地型」、「観光地型」の3つのモデルタイプに分けて、MaaSの実証実験が進められています。先行的な取組として実証実験に選定されたモデル事業を紹介します。
(1)大都市近郊型・地方都市型モデル
~地域に応じた移動手段を提供し、シームレスにつなぐアプリを提供(群馬県前橋市)
前橋市では、自動車の使われている割合(自動車分担率)が75%と極めて高く、自動車に依存している典型的な地方都市の一つで、高齢者が運転免許証を保有している割合や高齢運転者が加害者となる事故の割合が年々増えています。一方で、路線バスの運行本数が少なく、乗り継ぎにも課題がある等、公共交通機関の交通ネットワークが十分ではないため、移動の利便性が低い状況にあります。
この課題を解決するため、例えば、市内郊外部においては、地域交通網の最適な運用として、AIを活用したデマンドバスの配車効率化を行い、中心市街地においては、人手不足の中でも都心幹線の高頻度運行を実現するため、自動運転バスの実証実験を行っています。こういった取組に加え、効率的な乗り継ぎを実現するために、鉄道、路線バス、デマンドバス、タクシーなど地域内の様々な交通手段を一括で経路検索・予約ができるMaaSアプリの導入をします。
さらに、大型ショッピングモールや中心市街地の商業施設でのクーポン等の提供も検討されており、移動の利便性向上に加え地域経済の活性化が期待されます。
(2)地方郊外・過疎地型モデル
~定額タクシーを導入し、日常の移動手段を確保(島根県大田市)
少子高齢化で過疎化が進行している大田市は、公共交通機関が縮小・衰退しています。路線バスが走っていない地域が市の全域に点在しており、高齢者などの移動手段が不足しているだけでなく、市内の鉄道や路線バスは運行本数が少なく、病院やショッピングモールに行こうと思っても行先や時刻が合わないなど、利用者の移動ニーズが現行の交通サービスと合っていません。
そこで、日常生活における移動の確保策として、定額タクシーの実証実験が始まっています。MaaSアプリを利用することで、平日の日中(8:30~16:30)であれば、月額3,300円で乗り放題となる定額タクシーの予約や支払いができるようになります。また、AIを活用した効率が良い配車・運行経路最適化や、物流とも連携し、人の移動と同時に農産物の集出荷などを行うことにより、採算性の向上が期待されます。
(3)観光地型モデル
~観光地をスムーズに周遊できる環境を整備(静岡県伊豆地域)
伊豆エリアでは、路線バスやタクシー運転手の高齢化と人手不足により、路線バスの本数やタクシーの台数が少なく、拠点となる鉄道の駅から観光地までの移動に課題があります。そのため伊豆来訪者の8割がマイカーを選択する結果になり、幹線道路の渋滞が起きています。
この課題を解決するため、伊豆版MaaS『Izuko』が開発されました。Izukoを使えば、東伊豆と中伊豆における鉄道とバスが一定区間で乗り放題となるデジタルフリーパスを購入できるほか、下田海中水族館や遊覧船などの観光施設の割引チケットや、レンタカー・レンタルサイクルの予約や支払いなどをスマートフォン上で一括して行うことができます。伊豆地域を訪れる観光客が、公共交通により目的地までスムーズに移動し、観光地を周遊できる環境の整備が進められており、地域経済の活性化につながることが期待されています。
まとめ
ご紹介した通りMaaSは日本ではまだまだ普及していないのが現状です。
しかし現代の車事情や地域ごとの交通事情の格差などを改善する上で期待されているサービスであり、環境問題などの観点から国や大企業も積極的に取り入れていこうとしています。
何よりそのメリットは大きく、家計をはじめとした経済的効果も期待されています。
MaaSが普及すれば、私たちの移動手段はより良いものになり、無駄な時間や費用は省かれ、より効率的な移動が可能となります。
次世代の移動手段ともいえるこのMaaSの今後と広がる市場に目が離せません。